映画・映像産業の情勢(’14映演労連春闘方針より)

映画・映像産業の情勢(14映演労連労連春闘方針より)

 

(1) 映画産業の情勢

 

1月に映連から発表された2013年全国映画概況によると、2013年の入場人員は1億5588万8千人と前年比100.5%の微増であったが、興行収入は1942億3700万円で前年対比99.5%と若干減る結果となった。しかし、ODS関連の興収が76億4000万円と前年比160%の伸びを見せ、劇映画の落ち込みを補う形となった。

邦洋合わせた作品別興収のトップ3は、1位『風立ちぬ』(120億2000万円)、2位『モンスターズ・ユニバーシティ』(89億6000万円)、3位『ONE PIECE FILM Z』(68億7000万円)とアニメ作品が占めた。邦画だけを見ても、上記2作品に『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』(39億8000万円)、『名探偵コナン 絶海の探偵』(36億3000万円)の2作品を加え、上位4本がアニメ作品となり、12年の特徴として挙げた「健闘」ではなく、もはや興行界の中軸になった印象である。

次いで、実写も含めた邦・洋それぞれの作品別興収上位10作品について触れていく。12年はTV局主導のシリーズもの作品が絶好調だった邦画だが、13年はシリーズものの強力作品が少なく、フジテレビ作品の『真夏の方程式』(5位、33億1000万円)、『映画 謎解きはディナーあとで』(6位、32億5000万円)はヒットしたが、他局の作品は上位に食い込めなかった。海外でも評価が高かった『そして父になる』(7位、32億円)は大健闘したが、残りの上位作品も『劇場版ポケットモンスター ベストウィッシュ 神速のゲノセクト ミュウツー覚醒』(8位、31億7000万円)、『ドラゴンボールZ 神と神』(9位、29億9000万円)とアニメ作品が占めた。10位にかろうじて『清須会議』(29億6000万円)が入ったが、TV局主導作品のヒット数の減少が、すなわち実写邦画作品の低迷につながったのは何ともさびしい限りだ。映画会社の奮起が望まれる。

ここ数年元気のない洋画だが、13年もいまいち奮わなかった。前半こそ『レ・ミゼラブル』(2位、58億9000万円)、『テッド』(3位、42億3000万円)とヒット作品が続いたが後半にかけて失速し、トップは『モンスターズ・ユニバーシティ』と2年ぶりの80億円オーバーの作品はあったものの、大作と期待された『007 スカイフォール』(5位、27億5000万円)、『アイアンマン3』(6位、25億7000万円)、『ローン・レンジャー』(8位、20億9000万円)、『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(9位、20億6000万円)、『ワイルド・スピード EURO MISSION』(10位、20億2000万円)、『ワールド・ウォーZ』(11位、19億3000万円)、『パシフィック・リム』(15位、15億5000万円)と30億円を超える作品がなく、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(20位、10億8000万円)に至ってはかろうじて10億円台に乗せた有様だった。本国の成績が必ずしも日本でのヒットにつながらないのが現状だ。4位は『シュガー・ラッシュ』(30億円) 、7位は『怪盗グルーのミニオン危機一発』(25億円)とアニメ作品だった。日本を舞台にした2作品は明暗が分かれ、敗戦直後の日本を描いた『終戦のエンペラー』(12億円)は健闘したが、忠臣蔵から題をとった『47RONIN』(2億9500万円)は散々な結果に終わった。

邦画興収が1176億8500万円(前年比91.8%)、洋画興収は765億5200万円(前年比114.2%)となり、その比率は邦画が60.6%、洋画が39.4%と、前年よりも多少差は縮まったが、洋画の大ヒット作品がないと興行の活性化につながらない。東宝は、洋画で2・3・7・10・11位を占めた東宝東和作品と合わせて全体の46%の売上を占め、今年も寡占傾向にあった。

スクリーン数は3年ぶりに回復し、28スクリーン増え、13年末時点での全国映画館数は3318スクリーンとなった。スクリーンのデジタル化は95%を超えたそうだが、本場アメリカですらスクリーンのデジタル化は60%台であり、急激なデジタル化は弊害を生む危険性がある。耐震性強化・デジタル化の投資を断念した既存館の閉館は2013年も続いた。シネコンの新規出店数は5年ぶりに2ケタに乗せたが、10サイト増に留まり、今後も厳しい競争が予想される。

環境の変化に目を移すと、次世代放送サービスのロッドマップが示され、14年に4K試験放送、16年に8K試験放送、東京オリンピックが開催される20年には4K・8Kの本放送が始まる。劇場では画質での優位性が薄れ、立体音響や動く座席、風・水・香りなどの演出面での差別化が図られている。また、劇映画とODSの区別が曖昧となり、劇映画・アニメ作品でもODS形態の公開が増えている。イオンエンターテイメントによるVODサービスを映画館に提供する「U-NEXT」の取り組みは、今後の劇場の行方に一石を投じるかもしれない。14年4月に迫った消費税アップへの対策も喫緊の課題である。

フィルム業はいよいよ佳境に追い込まれ、生フィルムの価格上昇により、作業費もアップしている。アーカイブとしてフィルムに残す方法で生き残りをかけるが、作品のほとんどが製作委員会方式の現状では、アーカイブを見越した予算建ては厳しく、簡単な道のりではないと思われる。ボーンデジタル作品と呼ばれる新作においては、原版の定義すら決めぬまま走っており、長期保管・今後の利活用について、業界全体での熟議が必要とされる。現場での原版認識の欠如が、細かい事故・トラブルを生んでいることも挙げておく。 業績の良いアニメ映画だが、制作現場の重労働・低賃金問題は一向に改善されていない。「クールジャパン」の一環としてアニメ作品の輸出は国もバックアップしているが、その一部でも足元の制作現場に還元する施策が強く求められる。

デジタル化によって恩恵をうける人がいる一方、損害を被る人もいる。本来、デジタル化は映像文化のより良い発展であるべきだったが、効率ばかりを追い、映像文化の進化には及んでいない。フィルムの良さとデジタルの良さは併存すべきである。より良い映像文化の発展のために、ひとりひとりが考え、声を上げていく行動が求められる。

 

(2) 映像ソフト業界の状況

 

JVA(日本映像ソフト協会)発表の2013年1月から11月のビデオソフト売上累計は2,215億3,400万円(前年同期比99.0%)で、内訳はDVD売上が1,446億4,800万円(構成比65.3%)、BDが768億8,600万円(構成比34.7%)。

DVDにおいてはセルが866億4,800万円で前年同期比88.5%、レンタルは571億4,400万円で前年同期比90.1%と、ピークであった2004年より連続しての下降傾向が続き、厳しい状況が続いている。

BDにおいてはセルが728億5,200万円で前年同期比126.5%、レンタルが39億3,200万円で前年同期比106.0%と増加傾向にある。リリースタイトル面では、BDはセルが前年同期比124.2%の15,052タイトル、レンタルは前年同期比101.9%の1,713タイトルが発売された。セルに関しては順調に推移したアニメ映画と過去の名作をBD-BOXなどに仕様を変え、再リリースをする施策が功を奏したといえる。またレンタルに関しては残念ながら今までの盛り上がりに陰りが見えてきた結果となった。

一方、レンタルビデオに着目してみると、レンタルDVDの数量は26,184,000枚(前年同期比91.4%)、レンタルBDの数量は1,713,000枚(前年同期比101.9%)と微増に留まる結果となった。しかし、1泊2日の新作料金が2004年以降初めて上昇し、薄利多売についに歯止めがかかった。貸出金額単価を見てみると、新作1泊2日の平均で336円となり、前年よりプラス6円(前年比101.8%)となった。ただし、旧作については1週間料金単価が132円で前年からマイナス15円になるなどしており、メリハリをつけた料金設定となった。料金設定に関しては2014年4月以降の消費税増税によりまた一つ転換期を迎えるであろう。

映像コンテンツの楽しみ方が多様化する中、「BDやDVDを購入する・レンタルする」というハードルはますます高くなってきている。このような状況を打破するためには魅力的なコンテンツの拡充はもとより、ネット配信やモバイルサービスなど新規の映像メディアとの積極的な協力体制を築き、各々のメディアが持つメリットを提供し合い、デメリットを補完し合いながら、付加価値を高めていかなければならない。

映像配信における目下の課題としては、インターネットを通じて海外から配信される電子商取引に消費税が課されていないことである。この問題の解消は2014年4月の消費税率引き上げには間に合わず、国内配信企業は海外企業との価格競争上、ますます不利な立場に立たされることとなった。2015年度中に課税する方針を打ち出しており、その動向を見守っていく必要がある。

 

(3) アニメ業界の状況

 

●本数が増加したテレビアニメ

2014年1月17日現在のテレビ地上波アニメ番組は週58本(東映アニメ調べ、再放送、再編集番組を除く)で、昨年の8月の53本から5本増えた。製作会社別には東映アニメーションとトムス・エンターテイメントが5本と、大手プロダクションのシェアが増えている。テレビ東京系列は26本。土日の放映は29本となっている。深夜アニメは18本で、これも昨年8月の12本から6本も増えている。

●邦画を牽引する劇場アニメ

今年の正月映画の劇場アニメでは、『ルパン三世VS名探偵コナンTHEMOVIE』が1月7日現在ベストテン2位で興収35億円、観客動員数300万人突破と、ダントツの強さを見せている。他にも『HUNTER HUNTER the LAST MISSION』が6位と、テレビアニメの劇場版が続いている。さらにスタジオジブリの高畑勲監督が新しいアニメ表現を確立させた『かぐや姫の物語』が9位に入っている。 昨年も『風たちぬ』の興収120億円を筆頭に、『ワンピースフィルムZ』68億円、『名探偵コナン 絶海の探偵』36億円、『ドラゴンボールZ神VS神』興収29億円など、劇場アニメは邦画を牽引する存在となっている

●ブラック企業化するアニメ会社

テレビアニメの本数は増え、劇場アニメも好調を続け、クールジャパンを代表するアニメ業界だが、低賃金と長時間労働により新人の定着率が悪く、製作現場の人員構成は40歳以上のベテランと、数年で入れ替わる20歳代の新人という歪な構造となっている。 大手アニメ会社でも30代の中堅スタッフが育ちにくくなっており、アニメ会社が若者を使い捨てるブラック企業化が進めば、技術継承はおろか製作現場の担い手の確保も難しくなるだろう。


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